【北アルプス】燕岳 積雪期登山【燕山荘冬季小屋1泊】

Posted by

こんにちは!

4月に入り、雪山シーズンもいよいよ終わり…かと思いきや、3月末から立て続けに南岸低気圧が日本を通過したので、高い山ではたっぷりと新しい雪が降り積もりました。

そのおかげでこれから雪解けへと向かうはずのアルプスの山々は、まるで厳冬期のような姿を取り戻していました。

そんな新雪たっぷりの雪山となった4月の北アルプスに飛び込んできました!

今回のターゲットは北アルプスの女王、燕岳(つばくろだけ)

きっとこれが今シーズンの雪山登り納め。

宮城ゲートは冬季閉鎖中

燕岳は麓の中房温泉から登るのが一般的で、基本的にはそこまで車で移動できます。

しかし、12月〜4月の冬期間は中房温泉から約12km手前にある宮城ゲートが閉鎖されるため、車でもこのゲート前までしか来ることができません。

ということで、この宮城ゲートまでタクシーを使ってアクセスし、ここからゲートをすり抜けて中房温泉まで12kmの道のりを歩きます。6:00スタート!

ちなみに宮城ゲートの標高が約790m、中房温泉の標高が約1460mなので、この林道だけで700mも標高を稼ぐことになります。ただ、あまりにもアプローチが長いので、それほど標高を稼いでいるように感じませんね。

事前調査でここから中房温泉まで約4時間の道のりと聞いていたんですが、実際には3時間くらいで歩けました。(帰りは2時間45分くらいでした)

 

宮城ゲートを入ってすぐのところに登山届を書く場所があるので、ここで書いておきます。

 

中房温泉を起点とした林道のキロ程が0.2kmごとに設置されています。これをモチベーションに歩いていきました。

 

標高が上がってくると、降り積もって間もなさそうな雪が路面に現れ始めます。

凍結している部分もあるんですが、この道路を頻繁に整備している除雪車の轍がデコボコしているので、その上をたどるように歩くと滑らずスムーズに進めますよ。

 

たまに稜線が見えてきれいです。あそこまでいくんだな。

 

そして、9:00ころ中房温泉エリアに到着。厳密には、燕岳登山口は中房温泉よりも少し手前にあります。中房温泉はこの時期営業していないはずで特に用事はなかったので、燕岳登山口で休憩をとってからすぐに入山しました。

しかし12kmの林道歩きがあったせいで、登山口についた時点でもう満足感がありました。

しかしここからが本番… このあとかなり辛い思いをするなんて、このときは知る由もなかった。

終始トレースなしの合戦尾根

中房温泉から合戦尾根経由で燕岳を目指します。よっしゃいくぞ!と意気込んで燕岳登山口を出発したものの、のっけから急勾配&大量の積雪であっけにとられる。

しかも、燕岳に登るのは今回が初めてだったので、雪の下にある夏道がどうなっているのかもわからず、完全に手探りで道をつくりながら登るしかないという状況に。

 

場所によっては110cmくらいのストックも完全に埋まってしまうくらい抵抗のない雪が積もっているところもあり、踏み抜くと急に腰まで埋まることも。それでいて急勾配なので、抜け出せてもそのあと上に登ることができない。そうなると、その場所を迂回して別のアプローチで上を目指す必要があります。

これが登山口からほんの1〜2分登った場所の状況だったので、「これでは先が思いやられる」と、本気で早期撤退を覚悟しました。

「今帰れば今日のうちに東京に戻ってあったかい家で寝られる…」とか「でもせっかくここまで来たのに帰るなんてもったいないし、この苦難を乗り越えた先にはきっとものすごい絶景が待っているんだ」とか、いろんな思いが頭の中でぶつかりあっていました。

結局、振り返ればまだ登山口が見えるくらい初盤の場所で1時間半くらい立ち往生しながら考えた結果、ここは思い切って前に進もう!と決断したんです。

 

降りられなくなるのを覚悟で雪をかき分けて急勾配をよじ登り最初の難所を越えると、先人の足跡こそなかったものの、その下には登山道があるんだと言わんばかりの溝が延びていました。この溝に沿ってしばらく進んでいきます。

 

雪が腐りかけていたのか、アイゼンにくっつくくっつく。今までみたことがないくらいデカい雪団子ができて、しょっちゅう木の幹を蹴って振り落としていました。こいつも体力を奪っていった要因として大きかったな。

 

登山道に沿った溝は途絶えることもあり、そうなると手がかりになるのは赤テープ。

赤テープを見つけたらそこまで進んで、その場で上を見上げて次の赤テープを見つけてそこまで進む。この繰り返し。

しかし上を見ても次の赤テープが見えないことも多いので、その場合はなんとなく登山道っぽくなってそうな道を進んでいきます。

 

ようやく到着した第一ベンチ。ここの道標が辛うじて顔を出していましたが、続く第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチと、この先は一度も道標をみることはありませんでした。

 

人間の足跡は最初からずっとなかったものの、途中からウサギの足跡が現れました。

しかも、奇妙なことにこのウサギの足跡、ほとんど登山道に沿ってついていたんです。しかもかなりの長い区間ついていました。第二ベンチくらいから合戦小屋を超えてもまだありました。これを頼りに進んでいきます。

合戦小屋通過。体力限界が近い

すでに16:00を回っていたでしょうか… やっとの思いで合戦小屋に到着しました。

ここももちろん営業期間外。小屋の大部分は雪に埋もれています。

最悪、ここで幕営も考えましたが、夜の寒さや翌日の燕岳までの登りのことも考えると、ここで多少無理をしてでも燕山荘まで登ってしまったほうがこのあとがラクだと思い、頑張ることに。

ただし、ここまで夏山のコースタイムの2倍も時間をかけて登っていることを考えると、日没までに燕山荘に到着できないことが想定できます。

ヘッドライトを準備して、いつ暗くなっても歩けるように心の準備もしました。

 

合戦小屋から先は木々も減ってきます。しばらく誰も歩いていないので、上を見れば足跡ひとつないきれいな雪原が広がっているんですよね。自分がトレースをつけるのは大変ですが、こういう景色はそんな人だけが見られる特別な景色ですねぇ。

なんてロマンチックなことを、ブログを書いてる今だからいえますが、ここを歩いているときは必死でしたよ、斜度もけっこうあったので、3〜4歩歩いては立ち止まって息を整えていました。

 

完全に稜線に出たようです。昼前から稜線を覆っていたガスが取れ始めました。

景色は本当に美しいんですが、いかんせんそんなものを楽しむ余裕がない。

今はとにかく生き延びることに必死。

 

ガスも完全に取れてきたころ、稜線の先に目をやると、ついに今日の目的地、燕山荘が視界に飛び込んできました!

この瞬間、一気にモチベーションに火がついたのを覚えています。

すでに太陽は山の向こう。日は沈んでも、もしかしたらあたりが真っ暗になる前に到着できるかもしれない!と希望をもって、登り続けます。

モチベーションが上がったとはいっても、やっぱり身体は疲弊しきっているので、数歩歩いて立ち止まるのは変わらず。それよりも心に余裕が出てきたのが大きかったです。

ここまで誰にも会わなかったせいでかなり寂しい思いをしているので、それだけでけっこうメンタルはダメージを受けていました。

 

ちなみに、燕山荘直下では夏道は尾根をトラバースしますが、冬は尾根を直登して小屋の裏側に登り付きます。そのことを知らなくても、冬にわざわざ雪の斜面をトラバースしようとは思わないでしょう。

 

ここまで登ってくると、槍ヶ岳もばっちり見えるんですよ。

本当にきれいでしたね。燕山荘が見えたあたりで心に余裕ができて周りの景色を楽しむことができました。

 

目的は燕岳なんですけど、やっぱり槍がとにかく画になるので、何度もそちらの方向ばかり見てしまいますな。

表銀座の縦走もいつかやってみたい。

燕山荘冬季小屋到着

そしてなんとか真っ暗になる前に燕山荘の冬季小屋に着きました。

当然、この日は自分ひとりのみ。逆に誰かいたらびっくりしてるところです。

ちなみにこの冬季小屋の扉の開け方がわからず5分くらい格闘してしまったんですよね。

もうここで死ぬのかとすら思いました。

結局、この扉は押すでも引くでもなく、上に持ち上げるんです。ただし超絶重いので、扉を持ち上げたら中に転がっている突っ張り棒をすかさず引っ張り出して使ってください。

手で扉を持ち上げたまま入るのは無理です。

ほんと最後の最後に試練でした。

 

冬季小屋の中は広く、50人くらいは泊まれるんじゃないでしょうか。

今夜はここを独り占めなわけですが、まぁ心細い。

とりあえず水を完全に消費してしまっていたので、外から何度も雪を持ってきてはバーナーで水を作りました。

 

21:00ころ、寝る前に外を見ると見事な星空。この日は月が出ていたので、月明かりに照らされた山肌を見ることもできたんですがそれもまた美しい。あしたはいい天気になりそうだ。

2日目、意外と侮れない燕岳往復。

清々しい朝を迎えました。

といっても、小屋の中はマイナス10℃を切っていたはずで、マイナス5℃耐用のシュラフでは寒さをしのぎきれず、足元が異常に冷えて寝付けなかったんで、手袋を足に履いたりレインウェアのジャケットを下半身にまとったりして無理やり防寒してなんとか寝ました。

朝は日の出と同時くらいに目が冷め、荷物はいったん全部小屋の中に散らけっぱなしで、ピッケルとカメラだけ持って外へ。

快晴の青空に突き抜けるような寒さ、風は多少ありましたが冬山の稜線にしては穏やかなほう。天気読みはバッチリでした。

 

朝陽に照らされる表銀座方面。この景色を見た瞬間、昨日1000回は諦めて帰ろうと思った自分に1000回打ち勝って今ここに立っている自分を心から賞賛しました。

この景色を今日は独り占め。このまま向こうまで歩いていきたいくらいでしたが、今日のメインはこっちではなく….

 

そう、こちら!!北アルプスの女王、燕岳です。

燕岳ってこんなに雪積もるんだってくらい積もっています。遠くからみると夏道がどこに延びているのかまったくわからず、とりあえず進んでみることに。

 

燕山荘から燕岳までは片道約1.0km。意外とあるじゃないか…

一晩寝て多少回復したとはいえ、やっぱりあまり食べていないのと寒さにやられていたこともあってか、すこし登り返すだけですぐに息が上がってしまう。

ここは急がずにゆっくりと行くことに。

 

たまにこうやって夏道を示すロープや杭が見えることがあるんですが、そうでない部分があったり、明らかにその先に夏道が続いているのに大量の積雪が行く手を阻んだりしてきます。

バカ正直に夏道を辿ろうとするとかえって都合が悪いので、状況に応じて迂回路を見つけながら頂上を目指します。

念願の燕岳登頂!

そしてついに燕岳に登頂しました!

この日はまだ30分前に燕山荘から出発しただけなのに、すでに満身創痍。

一時はどうなることかと思いましたが、数々の苦難を超えてこうして登頂を果たしたことでもう大満足です。

でも雪山登山で本当に怖いのはここから。無事に下山してはじめて登頂の喜びを噛み締めたいところです。まだまだ気を抜けません。

 

燕岳山頂から北燕岳越しに立山連峰、後立山連峰を臨むの図。

立山連峰、後立山連峰はまだ一回も訪れたことがない山域。思えばまだまだ行ったことがない山ばかりだな。

 

裏銀座の山々でしょうか。なだらかな稜線が特徴的ですよね。こうして遠くから見ると、雪の上をすいすいと歩けてしまいそうに見える。実際そんなことはないんですけどね。

冬の裏銀座縦走なんて超絶ハードでしょ。

でもいつかやってみたいって思っちゃうんだよな。

下山開始

燕岳から無事に燕山荘に戻り、荷物をまとめてさっさと下山します。

中房登山口まで5.5kmということは、宮城ゲートまで17.5km!くそ!長すぎるぞ!

街でも17km歩くってそこそこ気合い入れるよな…

 

下山は基本的に前日の自分のトレースを辿ります。

1日目にまっさらな道にトレースをつけて、2日目に自らのトレースを辿って帰る…なんか素敵じゃないですか。

 

昨日の登りの苦労はなんだったんだと思うほど下山は超速。合戦小屋まで30分かからなかったです。昨日はここから燕山荘まで2時間以上かかったのに。

ただ、下山は速いぶん怖いところもあって、足にかかる力と勢いが登りよりも大きいので、けっこう踏み抜くんですよ。

一回、片足だけ股関節のあたりまでガッツリ踏み抜いてしまって、しかもその衝撃で周りの雪を固めてしまい、10分くらい身動きが取れなくなったときがありました。そのときは冷静になってザックから厚い手袋を出して、それを手にはめて必死に雪を掘り返して足を抜くスペースを作って脱出できたんですが、こういうことが下山では起こります。

それを経験して以降ちょっと気をつけて下るようにしました。

 

立ち往生した時間も含めて8時間半かかった登りに対して、下山は3時間かからず。

中房登山口でちょっとだけ休憩して、電波がつながるいまのうちに14:00に宮城ゲートにタクシーを呼んでおきました。

林道を歩き始めたのが11:15くらいだったので、タイムリミット2時間45分。12kmを2時間45分ってのはかなり好ペースで歩かないといけないんですが、まぁ多少下り坂だし、しょせんは整備された道路だしと高をくくっていたら見事に打ちのめされました。

この最後の林道が本当にきつかった。やっぱり2日分の疲労は相当なもんだったようで、へとへとになりながらも、タクシー到着時刻というタイムリミットが迫っているので歩みを止めるわけにはいきません。

 

この林道には、信濃坂という坂があって、これが下山時には登り返しとなります。

この坂が本当にきつかった。普通に歩けばなんてことない普通の坂ではあるんですが、さんざん歩いて疲弊した身体にこの登り返しは心臓破りだった。

 

そんでまぁやっとの思いで14:00ギリギリにゲートに戻ってくることができました。

帰りのタクシーはもう楽園のようでしたね。無事に戻ってこられて本当によかった。

実はこの林道を歩いているときから天気が崩れはじめて小雪が舞っていたんですが、このあと電車を乗り継いで松本駅に降り立ったころには土砂降りになっていました。

この日の天気はこうなることを知ってはいましたが、いざその通りになると感慨深いものがありますね。本当に天気の読みが天才的だったというか、神に味方されたというか…。

天気が崩れたといえば、そういえば実は中房登山口でちょうど入山するタイミングだったソロの人とすれ違ったんですが、その人は無事だったんだろうか… すれ違ったときに登山道の状況なんかは一通り説明したんですが、肝心のこのあと天気が崩れるということを伝え忘れてしまったんですよね。冬の燕岳にソロで挑むだけあって装備は見た感じかなりしっかりしている人だったので、無事であることを祈ります。

なにはともあれ、今回の積雪期燕岳単独、大成功です!

積雪期燕岳単独山行を終えて

まず教訓として、夏道を歩いたことがない山に、ノートレースの雪道にいきなり挑むのはけっこうハイリスクなことをしてしまったという点、反省してます。

天候のコンディションが抜群だったところに助けられた部分はありますが、今回はかなりギリギリの挑戦だったかなと思います。

雪山登山歴はおろか登山歴自体が2年にも満たない若造の自分が挑戦できる最大レベルの山行だったと思います。技術的にも、体力的にも。

あとかなり雪多かったですね、4月頭はまだまだ積雪期とはいえ、3月末の記録的な降雪ですっかり厳冬期の姿を取り戻していました。

ちなみに、この山行は4月2~3日でしたが、4月11日にもけっこうまとまった雨があったので、高い山では猛烈な降雪になっていたと思います。これでまた雪が増えてしまったかと思うので、入山を予定されている方は気をつけてください。特にこのエリアはこの時期本当に人が少ないので、道迷いや有事の際のリスクが非常に高いです。

登山をされる方のより楽しい登山生活のためにも、正しい判断を。

当日の日程

◆YAMAPレポート
https://yamap.co.jp/activity/771212

■日付:
2017年4月1日(土)安曇野市内に前泊
2017年4月2日(日)燕山荘冬季小屋泊
2017年4月3日(月)

■行程:
〜4月2日〜
6:00 宮城ゲート 出発(穂高駅付近からタクシー利用 – 3,400円)
8:57 中房温泉 燕岳登山口 到着
休憩60分
※入山後すぐに80分ほど立往生
12:11 第一ベンチ
16:13 合戦小屋
18:28 燕山荘 冬季小屋着
21:00 就寝
〜4月3日〜
5:00 起床
5:40 荷物を小屋に放置して燕岳へ出発
6:34 燕岳頂上
8:10 小屋発 下山開始
8:49 合戦小屋
10:39 燕岳登山口
休憩30分
13:55 宮城ゲート(タクシーで安曇追分駅へ – 2,300円)

 

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です